2012/9/26 6:00追記
本記事の内容は、武雄市のアンケート回答用紙のネット公開に関する活動に利用する場合に限り、
自由に転載・コピー・印刷・配布等していただいて構いません。
ただし情報元を明示するため、記事のURLは記載するようお願いいたします。
ただし内容については私見に過ぎませんので、責任は負いかねます。
全てが正しいとは限らないということはご承知おきいただき、
利用する方ご自身の判断と責任でご利用くださいませ。
2012/9/26 18:15修正
上で記事のURL掲載をお願いしていましたが撤回いたします。
掲載するかどうかは利用者ご自身でご判断下さい。
主旨さえ正しく伝えていただければ問題ありません。
ツイートしようと思って書いてたら長くなったのでここでまとめて書いてみます。
まだ色々書きたいことはあるのですがとりあえず暫定意見として。
関連リンク:(これらの記事を読んでからじゃないと把握しにくいかもです)
武雄市が匿名アンケートに答えた市民のアンケート用紙をスキャンして筆跡まで晒している件 - NAVER まとめ
【図書館・歴史資料館に関するアンケートの結果について】 | Facebook(武雄市公式)
「筆跡から特定」苦情 武雄市図書館アンケート公開/佐賀のニュース :佐賀新聞の情報サイト ひびの
武雄市:図書館構想市民アンケ 「個人特定」苦情2件 HP掲載中断 /佐賀- 毎日jp(毎日新聞)
武雄市民アンケで自由欄の氏名をHP掲載 : 佐賀 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
佐賀の武雄市長がまたやらかした!? 新図書館に係る市民のアンケートを無許可で公開 筆跡から特定されたと苦情の声も - ガジェット通信
苦情で公開中断の図書館アンケ再公開へ 武雄市/佐賀のニュース :佐賀新聞の情報サイト ひびの
武雄市図書館アンケート回答用紙が属性情報+筆跡含め完全スキャンされて一部がネット公開され、
現在は公開が中止されているものの、今月末までに全ての回答用紙が公開される予定となっている件。
「筆跡は個人情報では?」という切り口が多いけど「書かれた内容」も個人特定につながりうる。
例えば聞かれてもいない自分の属性情報を書いてしまっている回答がいくつかある。
そのうち1件はそれを手がかりとして現地に行って少し時間をかけて調べれば
素人の私でもその方を個人特定できるかもしれないというくらい重要な絞り込み情報。
こういう情報がネット上にそのまま晒された。
報道されている通り実名が書かれた回答1件もそのまま晒されたが、実名だけ消して再公開されるとのことだ。
実名だけ消しても重要な情報が残っていれば問題は解消しないと思うのだが。
回答用紙がそのままスキャンされてネット公開されることの怖さがここにある。
記入者が何を記入するかは予測できない。
選択式アンケートだとしても自分で選択肢を足したり意見を書くこともあり、
実際に本件でもそういう記述がいくつか見られる。
欄外にふざけて相合傘を描く人もいれば特定人物への誹謗中傷を混ぜる人もいるかもしれない。
そういうものが公開されないよう職員がチェックするにしても件数が膨大になればどうしても漏れが出てくる。
特に今回は実名記入が見逃されて公開された上に、発覚後も実名だけ消して全件公開すると言っている。
まともなチェックが行われているとは到底思えない。
そもそも透明性を示す証拠としての生データ公開と言ってるので手を入れずに公開するという意識しかなかったのではないか。
チェックするという発想すらなかったのではないか。
もっと言うならチェックによる修正が増えれば証拠としての公開という位置づけも揺らぐ。
「塗りつぶされた部分に都合の悪い意見が書かれてたのでは?」という話にもなってくるわけだ。
苦労して修正してアップしても証拠価値が低いという悲しい話。
回答用紙が完全スキャンされてネット公開されたというのは前代未聞。
とりまとめたデータの発表とともに回答用紙の原本を市役所で公開すれば十分のはずだし、実際にそれも行う予定のようだ。
武雄市がネットへの無差別公開にこだわる理由が全くわからない。
回答用紙には「結果等は10月に公表します」と書かれていた。
しかしこの文言を
「回答用紙がそのままネットに晒されます」
と受け取った回答者は果たして存在するのだろうか?
私自身は、ネットで初めてこの話を知った時、「その発想はなかった」と衝撃を受けた。
ネットへの公開について「回答者の同意を得ている」とはとても言えないのではないだろうか。
また、武雄市は
「個人特定を危惧する人は申し出ればその分はワープロ文字に変えて公開する」
と言っている。
しかし、無記名アンケートなのにどうやって「申し出る」のだろう。
回答者はどうやって自分の回答用紙を指し示せばよいのだろう。
市側はどうやって回答者と回答用紙を結びつけるのだろう。
更に、先行公開されていた325件の回答には武雄市外から来た人の回答が71件含まれている。
市民に対してもそうだが今月末までの短期間で市外の人にまで「申し出」の件がちゃんと伝わるのだろうか。
とてもそうは思えない。「今月末までに再公開」を目指しているのだから実質的な期間はもっと短い。
事実上周知は不可能だと言っても過言ではないと思う。
ちなみに実名を書いてしまったのも市外の人である。
そんなわけで回答用紙のネット公開は問題点とリスクとデメリットだらけであり、メリットが見当たりません。
武雄市は「情報の透明性と公共の利益を重視」と言っていますが、本件は市議会で追求され、
無駄に揉める可能性も高いでしょう。(追求されないなら市議の資質を疑います)
実際問題として
「性別や年代、町の情報と筆跡を組み合わせると、見る人が見れば個人を特定できる」
「狭い地域なので個人が分かる。公表をやめて」
という苦情が寄せられているにも関わらず、同意も曖昧で周知も不十分なまま公開を強行することになれば、
場合によっては
「武雄市が回答者の同意無しに回答用紙を不特定多数に公開したのは不当」
といった訴訟に発展する可能性もあるのではないでしょうか。
仮に訴訟になれば裁判費用や人手も必要になります。
武雄市の立場は苦しくなるのではないでしょうか。
公共の利益はむしろ失われるのではないでしょうか。
また、もし今回の「回答用紙のネット公開」が許されるのであれば、
それはそれで国民全てを巻き込んだ大きな社会問題になっていくと感じています。
怖くて手書きのアンケートに答える気がなくなりますよね。
大袈裟に言えば公共機関や民間のアンケートが機能しなくなる可能性だってあるわけです。
(公開形態を明記しとけばいいだけの話かもしれませんけど、
そのへんが曖昧なまま公開してもいいという前例になるわけです。)
まだ書き足りない部分はありますが今はここまでにしておきます。
武雄市には冷静かつ客観的な視点から事態を再検討し、
無駄な意地を張らずに公開を中止していただくことを望みます。
※2012/9/24 2:00追記
全てのアンケート回答をワープロ文字にするという選択肢もありますが、
それは結果的に「証拠としてのネット公開」という意義をほぼ無くします。
また、属性情報や自由記入欄の内容も含めて全てワープロ文字化したとしても
筆跡の情報が無くなるだけであり、筆跡以外の情報を統合すれば
比較的容易に個人特定されやすいと考えられる例は他にもありました。
(例えば自由記入欄に家族構成をわりと細かく書いている回答がありました。)
そのあたりは回答者自身が書いたことですからある程度の特定リスクは
認識しているかもしれませんが、やはりそのまま広く公開するのは不適切であると考えます。
仮に公開の目的を「市民の意見を広く知ってもらうこと」に変更するならば、
自由記入欄と属性情報を切り離し、回答の主旨をゆがめない範囲で
個人情報につながる記述を削るといった配慮も必要になるのではないでしょうか。
※2012/9/24 6:40追記
樋渡啓祐市長や武雄市は、これまでも個人情報の扱いに関しては
うんざりするほど突っ込まれて嫌気がさしていらっしゃるかもしれません。
CCCへの図書館運営委託における個人情報の扱いについても
一部の専門家からの指摘をはねのけて問題無しとの立場をとっておられるようですし、
今回のアンケート回答全面公開についても
「筆跡では個人は特定できないので公開は問題ないと思っている。」
と主張していらっしゃいます。
私は法律的な知識があまりないので、それらの解釈が正しいかどうかについては言及できません。
ただ、懸念しているのは、
「市は一度アンケート回答を全件公開すると決定した。
ここで抗議を受けて公開を中止してしまうと、市側の個人情報に対する
認識が甘すぎるということを認めたととらえられかねない。
そうなってしまうと既に進んでいるプロジェクト等にも大きく問題が波及しかねない。
それを防ぐため、
様々なご意見を受け検討いたしましたが、公開は問題ないという結論に達しました。
アンケート回答者への周知も報道により十分認知されていると考えられます。
公開するデータは市職員が厳重にチェックしましたので個人特定につながることはありません。
当初の予定どおりアンケート回答用紙を全件公開いたします。
と押し通すのが上策である。」
という対応をとられてしまうのではないかということです。
上で述べたように、そこまで強引に回答用紙を公開する理由は見あたりません。
少なくともリスクを超えるほどのメリットがあるとは到底思えませんし正当性も危ういと思います。
公開に踏み切った場合、迷惑をこうむる可能性があるのは、
アンケートに協力した市民、あるいは市外からの回答者です。
どうかその点を考慮していただきたいと思います。
※2012/9/24 7:00追記
記事の内容でわかると思いますが、私の手元には、市が先行公開していた
「325件分の回答用紙をスキャンしたPDFファイル(一部実名入り)」
があります。
このファイルは市のホームページでは現在は公開中止となっており入手できません。
しかしながら、第三者がネット上で公開しており、容易に入手できることがわかっています。
当然「不当な公開であり即刻中止すべき」と主張されると思いますが、
「一度ネットに出てしまった情報は、公開元ですら完全にコントロールすることは不可能」
という現実を如実に表しているとも言えます。
某動画サイトでは「消したら増える」「不死鳥動画」などという言葉が横行しているほどですね。
「一度データをネットに公開したら取り返しがつかない」
このことをもう一度よく考えていただき、慎重に判断していただければと思います。
※2012/9/24 11:50追記
本件に関する私のツイートや関連ツイートをtogetterでまとめてみました。
武雄市は図書館アンケート回答用紙の無断ネット公開を撤回して下さい - Togetter
※2012/9/25 20:30追記
本件について、本日午後、武雄市役所 文化・学習課および樋渡市長宛に、
「回答用紙のネット公開の撤回」を求めるメールを送りました。
内容はこちらの記事に掲載してあります。
武雄市に図書館アンケート回答用紙の無断ネット公開の撤回を求めるメールを送りました: さまよう金の髭
※2012/10/10 16:20追記
この記事への追記を忘れておりましたが、本件については9/28付で
武雄市から「公開は行わない」という発表がありました。
しかし根本的な問題は解消されておらず、今後も様々な懸念が残りそうです。
武雄市の図書館アンケート回答用紙は非公開となりました。しかし問題は・・・: さまよう金の髭
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