武雄市の新図書館の安全性は未だ疑わしく、商業主義の文化破壊でもあると考えます
この記事はツイッターで武雄市図書館問題について話し合う #takeolibrary というハッシュタグに
寄せられている意見や情報なども参考にして書かせていただいております。
意見や情報を寄せておられる皆様に感謝いたします。興味のある方はご覧になってみて下さい。
なお、私のツイッターアカウントは @goldenhige となります。
■本記事のあらすじ(結構長いので)
●前の記事に書いたように、佐賀新聞社のサイトに寄稿した井上一夫氏のブログ記事が
樋渡市長の理不尽な抗議により一時非表示にされた。
●一時非表示にした佐賀新聞社の対応は問題もあると思うが、
素早く取材を行い新情報の公開と再掲につなげた点については高く評価したい。
●井上氏が懸念を示した「蔵書の落下対策」に関する樋渡市長および武雄市役所の主張は、
安全対策の具体的な基準など詳しい情報が示されておらず、いまいち説得力に欠ける。
地震対策だけでなく通常業務での安全性にも疑問があるので、
彼らの主張だけを鵜呑みにせず、早急にしっかりとした調査・検証が必要であると考える。
●「図書館スペースがTSUTAYAやスタバに追いやられる」という井上氏の主張について、
武雄市役所は「新図書館にそぐわない表現だ」と主張しているが、
井上氏の主張は公表されている情報から判断しても妥当なものである。
樋渡市長や武雄市役所は、図書館スペースに無理やり本を詰め込んで
利便性や安全性等を犠牲にしたうえで、TSUTAYAやスタバに異常なほど便宜を図っている。
●そもそも追いやられるのは図書館スペースだけではなく、井上氏の記事にもあるように
武雄市にとって重要な文化施設である蘭学館までもが、市民へのまともな説明もなく
一方的に潰されてしまい、TSUTAYAの有料CD/DVDレンタルコーナーにされてしまう。
はっきり言って樋渡市長や武雄市役所は文化を破壊しているとしか思えない。
これは来年度から図書館運営を委託されるCCC社(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)についても同様。
●佐賀新聞社には、今後井上氏とも協力し、新図書館構想を始めとする
武雄市関連の問題について、しっかりとした検証報道を行っていってもらいたい。
また、佐賀新聞社だけでなく、多くのマスコミが各自で検証報道を行ってもらいたい。
発表されたことを鵜呑みにしてそのまま報道するだけのマスコミが多すぎます。
もっとしっかり実態が報道されることを望みます。
●この記事に書いた内容は、市民を始めとした皆様に広く知っていただき、
それぞれでご判断していただきたいと考えています。
【記事本文開始】
武雄市民の井上一夫氏が佐賀新聞社の「ばってんがサイト」に寄稿したブログ記事が、
武雄市の樋渡啓祐市長からの理不尽な抗議により一時的に非表示にされ、
その後一部を修正した上で再掲された件について。
前の記事からの続きとなりますので、そちらからご覧いただければ幸いです。
まず、再度簡単に事の流れを示します。
1.12/26に、武雄市民の1人であり「武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会」の
代表世話人の1人でもある井上一夫氏が、佐賀新聞社の論壇サイト「ばってんがサイト」に
「知的基盤を奪われる武雄市民」(←リンク先は魚拓)
というブログ記事を寄稿。
内容は、武雄市図書館・歴史資料館が、樋渡市長の新図書館構想によって
踏みにじられていることを懸念しているというもの。
2.12/27に、武雄市の樋渡啓祐市長が、記事中にある
「地震時にはこの蔵書は1階フロアに一気に崩落し、
人的被害が出る可能性が強いと思っている。」
という表現について、井上氏本人ではなく佐賀新聞社に抗議。(ブログ、Facebook)
3.12/27に、佐賀新聞社が、樋渡市長の抗議を受け、声明記事を発表。
一時的に井上氏の記事を非表示にする。
4.12/28に、佐賀新聞社が武雄市役所に取材を行い、その結果として、
『「地震時にはこの蔵書は1階フロアに一気に崩落し、
人的被害が出る可能性が強いと思っている」という一文について、
事実と異なることを確認しました。』
という事情説明の記事を掲載。
記事では、「とられている落下防止対策の内容」や、
「その点について過去に説明がなされていなかった点」なども説明された。
5.この取材の結果として、井上氏の記事は問題だと指摘された部分のみを修正し、
12/28のうちにあらためて新たな記事として「ばってんがサイト」に掲載された。
「樋渡市長の苦情を受けて井上氏の記事を一度非表示にする」という対応が
適切だったかどうかは評価が分かれると思いますし、私も少なくとも非表示ではなく
樋渡市長の言い分を併記して記事の公開は続けたほうがよかったとは思っています。
今回の件は樋渡市長の理不尽な言論封殺行為であり、
筆者の井上氏を理不尽に貶める行為でもあると考えているからです。
しかしその一方で、わずか一日で素早く取材が行われ、新たな情報の公表と共に、
井上氏の記事が再掲されたことについては、高く評価したいとも思っています。
(ただし以下で書くように、内容についてははまだ疑問が残っています)
前の記事にも書いたように、井上一夫氏は
「武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会」
の代表世話人の1人でもあり、一級建築士の資格を持ち、
武雄市役所勤務時代に武雄市文化会館の建設にも関わっており、
市役所を退職した後は地域づくりの活動に取り組んでおられる方です。
井上氏の記事は、武雄市図書館・歴史資料館の様々な問題を考える上で
重要な指摘を含んでいると思いますので、是非ご覧になって下さい。
以前発表された記事もあわせ、リンクを示しておきます。
地域主権を考える―武雄市図書館・歴史資料館問題から : ばってんがサイト / 佐賀新聞
知的基盤を奪われる武雄市民 ―武雄市図書館・歴史資料館問題から(2) : ばってんがサイト / 佐賀新聞
さて、ここからが今回の私の記事の本題となります。
今回、佐賀新聞社は武雄市役所に取材を行い、
「崩落の懸念は事実と異なる」
という発表を行いました。しかし、
「佐賀新聞社が出した結論は正しいのだろうか」
「樋渡市長や武雄市役所の様々な主張や行いは正しいのだろうか」
というのが、今回の私の記事の主題です。
まずは佐賀新聞社の12/28の事情説明の記事を見てみましょう。
記事にあった2階部分の新しい画像も転載させていただきます。
抗議いただいた件の事実確認について(ばってんがサイト事務局) : ばってんがサイト / 佐賀新聞
取材でわかったという主な内容を、文章はなるべくそのままで箇条書きにしてみます。
1.2階の書架はブログ執筆者の井上様がお書きになっていた通り背が高く、
高い部分は閲覧者が自分で取り出すことはできません。
2.ただし、この背の高い書架は2メートル10センチより高い棚においては、
本の背に「転落防止用の柵(ストッパー)」を付けて、地震等で揺れても
本が落下しないように設計しているとのことでした。
3.2メートル10センチより低い部分は、もしも本が棚から落ちても、
通路部分(1メートル50 センチ)と強化ガラスの間に本がとどまり、
1階まで転落することがないようにしているそうです。
4.書架の高い部分に転落防止用の柵を設けることは、私どもブログ運営側は知りませんでした。
ただ、この転落防止用の柵を設けるという事実は、これまでに武雄市議会や市民説明会において
説明がなされたことはなかったとも市のご担当者から聞きました。
パースを見ても転落防止柵はそれと分かるようには描かれておらず、分かりません。
5.記事には
「図書館部分は蔦屋書店とスタバコーヒー店に占拠され、
図書館は奥に押しやられ2階に追い上げられてしまっている」
という表現がありました。新図書館構想では、現在10万冊の開架図書を
20万冊に増やす予定で、1階にレンタルスペースはできるものの、
1階部分の開架図書数は従来より増えるそうです。
「追いやられて」という表現は開架冊数を増やそうという
新図書館の考え方とそぐわないとのことでした。
6.2階の手すりの高さについては武雄市の担当者の方から
「1.1メートル」という回答をいただいています。
(コメント欄での担当者の補足より)
前の記事にも書いたとおり、2階部分の安全性については、これまで樋渡市長や
武雄市役所に質問しても無視されていましたが、今回の佐賀新聞社の取材で
ようやく新しい情報がいくつか明らかになったのは喜ばしいことですね。
既出情報が少なすぎて、この程度のことで喜ばなければならない状況がそもそも異常ですが。
上に挙げた「取材でわかったという点」などについて、考察してみます。
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高い部分の本を閲覧者が自分で取ることができない件について
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なんのための「20万冊開架」なんでしょうね。
不便かつ危険になっただけのように思えるのですが。
それも、怪我人や死人が出かねないレベルで。
地震対策だけでなく、普段の作業の安全性などは考慮されているのでしょうか?
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蔵書の落下防止対策の基準について
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井上氏が懸念し、樋渡市長から問題だと抗議されていた
「地震時にはこの蔵書は1階フロアに一気に崩落し、
人的被害が出る可能性が強いと思っている。」
という表現については、
●2.1メートル以上の高い部分は柵(ストッパー)をつけるので、1階には落下しない
●それ以下の部分については通路部分にとどまり、1階には落下しない。
という武雄市役所からの説明だけを根拠として、「事実と異なる」と判断されています。
しかし、これらの対策が、どの程度の地震を想定し、どう検証されたものなのかについては、
記事中には書かれていません。
樋渡市長のブログ記事には、
「あの東日本大震災を意識しない設計というのはあり得ません。」
とあるので、そのまま捉えるなら東日本大震災レベルの地震を想定しているはずですが、
少なくとも佐賀新聞の記事には、どういった前提条件で説明されていたのかが書かれていません。
そもそも樋渡市長はなぜかブログで建築基準法を持ち出していますが、
蔵書の落下防止対策と、樋渡市長が持ち出した建築基準法は全く関係がありません。
たしかにキャットウォーク(通路)などは建築基準法に基づき設計・建築されるのは当然でしょう。
しかしその程度のことは一級建築士の資格を持つ井上氏は当然知っているでしょうし、
そもそも一般人の常識としても、そんなことは自明でしょう。
問題をすりかえられないよう、注意が必要です。
(蔵書の落下防止対策は、建築基準法で定められているわけではなく、
各図書館で個別に対応されているという指摘はツイッターで出ていました。
ある程度の共通ガイドラインはあるような気もしますが、
私にはこの真偽の判定はできませんので、間違っていれば指摘をお願いします。)
また、樋渡市長の
「あの東日本大震災を意識しない設計というのはあり得ません。」
という文章は、
「東日本大震災レベルの地震でも本は落下しない」
と言っているわけではないことにも注意が必要でしょう。
東日本大震災を意識して対策を取るのは当然としても、現実問題として十分な対策が取れるとは限りません。
東日本大震災では建築基準法を満たしている建物でも大きな被害が出たのは言うまでもありませんよね。
参考までに、筑波大学附属図書館の東日本大震災の被災記録のサイトを示します。
被害写真を見ると、あらためて安全対策の重要性がわかります。
私個人としては、樋渡市長は問題のすり替えや詭弁、印象操作等を多用する特性を持っていると考えており、
簡単に騙されないよう、樋渡市長の言動は厳しい目で見る必要があると考えています。
平気でその場しのぎのデタラメを言い、理不尽に他者を貶める姿を何度も見てきていますので。
これらを踏まえ、私からは佐賀新聞社に対して、
●武雄市役所が提示した本の落下防止対策は、
どの程度の地震に耐えられると説明されていたのか。
といった、事実確認のための質問メールを送りました。
具体的な質問は記事の末尾に載せたメール本文をご覧下さい。
なお、これも非常に重要なことなのですが、問題なのは地震対策だけではありません。
高い部分の本の出し入れや清掃といった、日常の業務における危険も心配です。
どのように作業をするつもりなのかわかりませんが、ハシゴが外れる、
足を踏み外す、手を滑らせるといったトラブルで、人や本などが容易に
1階まで落下してしまうような気がしますが、果たして大丈夫なのでしょうか?
このあたりの安全性の担保についても、説明と検証が必要ではないかと思います。
※2013/1/14 18:30追記
その後、武雄市役所に問い合わせを行った結果、
2階の巨大書架は3.9mの高さになることがわかりました。
1階には4.6mの書架も置かれるとのことです。
その一方で地震対策については「JIS基準に基づき」という回答しか得られませんでした。
書架の安全性については未だに懸念が払拭できない状況だと考えています。
武雄市役所からの回答は以下の記事に示しています。
武雄市の新図書館では高さ3.9~4.6m、12~13段の巨大な書架が使われるとのことです
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転落防止用の柵について過去に説明されていなかった件について
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前の記事で書いたように、樋渡市長も武雄市役所も、過去に送った質問を完全に無視しましたし、
少なくとも11/5時点では図面等も不開示でしたもんね。
自分達には佐賀新聞社や井上氏に抗議する資格なんて無いってことを自覚して、
両者にちゃんとお詫びして下さい。
それと今からでも早急に市民に対して積極的な説明を行って下さい。
これまでに公表されているパース図をかき集めるだけでも、物凄く大変な作業でしたよ?
市議会や説明会でも、言を左右した不明確な説明ばかりですし、
言ったことを平気で覆しますし、市民への説明不足にもほどがあると思うのですが。
そもそも、いまだに公式の説明ページや説明資料すらないってどういうことなんでしょうか?
「9月議会後に作る」とされていた説明ページがいまだに作られていないのは何故でしょう?
12月議会で突然方針変更して蘭学館を潰し、TSUTAYAの有料レンタルスペースにしたように、
まだ他にも過去の説明を覆す予定があるから作れない、あるいは意図的に作っていないのでしょうか?
一度わかりやすく正式に発表してしまったら覆すのが難しくなってしまいますもんね。
まさかギリギリになって突然
「やっぱり貸出カードは全部Tカードにします。」
「やっぱり貸出情報もCCCに提供するようにします。」
なんて言い出さないでしょうね?
それとも、行き当たりばったりで計画を進めているので、
当事者である市役所すら正確な情報を出せないということなのでしょうか?
これらはひねくれた見方かもしれませんが、これまでの異常な経緯を考えると
色々と疑惑を持たざるをえません。
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井上氏の
「図書館部分は蔦屋書店とスタバコーヒー店に占拠され、
図書館は奥に押しやられ2階に追い上げられてしまっている。」
という表現は、新図書館にそぐわないものなのか?
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武雄市役所は、
「新図書館構想では、現在10万冊の開架図書を20万冊に増やす予定で、
1階にレンタルスペースはできるものの、1階部分の開架図書数は従来より増える。」
ということを根拠として、
「「追いやられて」という表現は開架冊数を増やそう という新図書館の考え方とそぐわない」
と主張しています。
実は、新図書館構想では従来の閉架スペースをつぶし、ほぼ全ての本を開架にすることになっています。
11/15にわずか23人の参加者であまりにもひっそりと行われた市民説明会で、
新図書館の開架面積の数値が説明されていますが、それによると、
従来の図書館の開架スペース: 1140平米
新図書館の合計開架スペース: 1571.7平米
内訳 新図書館1階の開架スペース: 1219.3平米
新図書館2階の開架スペース: 352.4平米
TSUTAYAおよびスターバックスのスペース: 484平米
となるそうです。
(なお、12月議会で突然の方針変更が発表され、蘭学館がつぶされて
TSUTAYAの有料CD/DVDレンタルコーナーにされてしまうことが決定されてしまったので、
TSUTAYAやスターバックスのスペースは蘭学館の252平米が足され、
合計736平米程度に広がることになります。)
上の数値から計算してみると、新図書館の合計の開架面積は、従来の1.38倍となります。
また、武雄市役所の説明によると開架図書数は10万冊から20万冊に増えるので、従来の2倍となります。
つまり、単位面積あたりの図書数(密度)は、従来の1.45倍となります。
なお、樋渡市長のブログによると、図書数は
「開架8万 閉架10万」が基本「開架20万」(になる)
と書かれていますので、この場合、開架図書数は従来の2.5倍となります。
そしてこの場合、単位面積あたりの図書数(密度)は、従来の1.81倍となります。
また、子供向けスペースが従来より広くなるとも説明されていますので、
単位面積あたりの図書数(密度)は更に増加する可能性もあると考えるのが妥当でしょう。
そして、同じ面積の中に、より多くの本を収納したいのであれば、
●書架の高さを高くし、段数を増やす
●通路などを狭くし、書架の配置密度を上げる
●閉架でよくあるような可動式の本棚を使い、収納効率を上げる
●これまで使っていなかったスペースをうまく活用する
●これらの手法を組み合わせる
といった対処がどうしても必要になってきます。さすがに可動式は無いとは思いますが・・・。
想像してみると、これは結構怖いことではないでしょうか?
あなたの近所の図書館を思い浮かべて下さい。おそらく本棚は6段か7段のものが多いと思います。
仮に6段だとして、本棚の配置はそのままにすると仮定すると、
図書の密度を1.5倍にするなら9段、1.8倍にするなら11段の本棚が必要になります。
本棚の高さも当然1.5倍~1.8倍になるはずですね。
当然ですが、上のほうにある本を探したり取ったりするのは非常に難しくなりますし、
事故の危険も著しく増すことになります。
通路を狭くして本棚の配置密度を上げる方法もありますが、それはそれで
本を運ぶカートや車椅子の方の通行、人のすれ違いが難しくなるなど、色々な問題が発生します。
従って、これまでの使い勝手を維持した上で開架図書を2倍~2.5倍に増やしたいのであれば、
開架スペースも従来の2倍~2.5倍を確保するのが理想になるわけですが、
実際には1.38倍しか確保できていないということになります。
TSUTAYAやスターバックスの面積を含めてさえ、従来の1.8倍にしかなりません。
(蘭学館部分除く)
新図書館の図書の密度が1.5倍~1.8倍以上になるというのをイメージするために、
改装前の武雄市図書館の開架部分の写真を見てみることにしましょう。
1階入り口の情報検索コーナー付近。 出典: 武雄市役所のFacebook記事(2012/9/28) |
2階奥から1階入り口方向を見下ろす。 出典: (株)佐藤総合計画 |
2階奥から1階入り口方向を見下ろす。(少し違うアングル) 出典: 西日本新聞経済電子版(2012/10/7) |
2階中央付近から1階やや奥方向を見下ろす。 出典: 那須町長 高久まさる氏のFacebook(2012/7/2) |
2階中央付近から1階奥方向を見下ろす。 出典: 熱海市議会議員 村山憲三氏のウェブサイト記事(2006/3/29/) |
低めの書架が使われ、色々な本に触れやすくなっているのがわかりますね。
空間の使い方にも割と余裕が感じられますし、明るく素晴らしい図書館だったと思います。
なぜこのように新しく綺麗で素晴らしい図書館を7億5千万円もかけて改装する必要があるのか、
まったくもって理解不能です。
(武雄市の負担額は4億5千万円で、1世帯あたりに換算すると2万5千円以上です。)
この状況から、単位面積あたりの図書数が1.5倍~1.8倍以上になるのを想像してみて下さい。
なお、円状になっている検索席のスペースも従来の開架スペースの一部のはずなので、
その部分も書架にすると考え、全体として写真で見えている本の約1.5倍~1.8倍以上が置かれるのを
イメージすればよいと思います。写真で見えていない1階奥の開架スペースもありますので
あくまでも大雑把なイメージとなりますが。
実際の新図書館では円状の情報検索コーナーのある部分はTSUTAYAになりますし、
そのかわりに従来の書庫などのバックヤードをつぶして開架スペースにしたり
2階の壁際に巨大本棚を設置するといった改装がなされます。
さて、ここであらためて新図書館のパース図をいくつか見てみることにしましょう。
(ここに挙げたパース図は一部のみです。他のものについては以前の記事から見れます。
それぞれのパース図の出典等もそちらをご参照下さい。)
2階キャットウォーク部のパース図。 2012/12/28に佐賀新聞社のばってんがサイトにも掲載されたもの。 壁沿いに天井近くまである12段の巨大な本棚がぎっちりと設置されているのがわかる。 高さは3~4mあるようで上のほうにある本は利用者が自分で取ることはできない。 また、画像右下1階部の、書籍が平積みにされている部分はTSUTAYAの物販コーナー。 雑誌などは館内のカフェや座席等に持ち込んで閲覧するのは自由だが、 売り物なので借りて家で読むことはできず、館外に持ち出す場合は買い取りとなる。 |
1階に置かれる巨大本棚のパース図。 このパース図は2012年5月時点のものなので実際の配置は大きく変わるが、 同じような大きさ・構造の本棚が使われるのは別の新しいパース図からもわかる。 まるで凱旋門のようになっており、人が通り抜ける部分の上にまで本が並べられている。 当然かなりの高さになるので、上のほうの本を利用者が自分で取れるかどうかは不明。 |
パース図はあくまでもイメージにすぎないとのことですが、少なくとも取材によって
「2.1メートル以上の高さの本棚」が存在することは明らかになっていますし、
おおむねパース図どおり背の高い本棚が多くなると考えたほうがよいのでしょう。
要するに、TSUTAYAやスターバックスに贅沢にゆったりとスペースを使わせる一方で、
図書館スペースでは手の届かないほど高い所にまでギッチリと本が詰め込まれ、
まるで出来の悪い倉庫のような状態になっているように思えます。
武雄市役所の主張は上にも書いたとおり
「1階部分の開架図書数は従来より増えるので、
「追いやられて」という表現は開架冊数を増やそう という
新図書館の考え方とそぐわない」
とのことですが、私は「単に増やせばいいというものではない」と思います。
利用者や職員の利便性や安全性の確保については、どのように検討されたのでしょうか?
これらも踏まえると、井上氏の「追いやられる」という主張は妥当だと私は思います。
新図書館では、図書館スペースは
「商業スペースに追いやられ、奥や2階に押し込まれる」
のではないでしょうか。
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ちょっと脱線しますが商業スペースについて
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新図書館では、多くの雑誌が読めるようになるというのをアピールしているようですが、
上に書いたように雑誌は館外に持ち出す場合は買い取りになる「TSUTAYAの商品」です。
雑誌好きの方には喜ばれるかもしれませんが、それは「図書館」ではなく「TSUTAYA書店」ですね。
CDやDVDについても、ごく一部を除き、ほとんどはTSUTAYAの有料レンタル商品です。
武雄市内にも既にTSUTAYAはあるのですが、後述するように蘭学館という重要な文化施設を
わざわざ踏みにじって、もう1つの店舗が図書館の中に出店されるわけですね。
樋渡市長は「図書館の付加価値を上げ、利用者を増やす」と主張しているようですが、
私にはこれが「図書館の付加価値を上げる行為」だとはあまり思えません。
商業施設という「別の価値」を公共施設内に無理やり押し込み、
その代償として、図書館・歴史資料館そのものの価値を激減させているように思えます。
商業施設との複合効果の全てを否定するわけではありませんが、
仮に利用者が増えたとしても「図書館の利用者が増えた」と喜んでいいものなのでしょうか。
「増えたのはTSUTAYAやスターバックスという商業施設の利用者だけでした」で
終わってしまう話になりかねないのではないでしょうか。
実際にやってみないとなんともいえない部分はありますが、
2013年4月予定の開館以降、武雄市民の皆さんがどう評価するのかは、とても気になっています。
スターバックスは多分喜ばれると思ってはいますが、個人的には
「図書館じゃなくて、ゆめタウンあたりにスターバックスを誘致していれば、
同じかそれ以上に喜ばれるよね?
図書館内だと静かさに気兼ねして会話を遠慮してしまいそうだけど、
ゆめタウンならそんなことを気にせずにおしゃべりできるし。」
と思っています。ほぼ1フロアの武雄市図書館では声が響きそうですしね。
また、雑誌や新刊本は地元の書店にとっても重要な収入源の1つだと思うのですが、
それを図書館内のTSUTAYAで販売するわけですよね。
図書館向かいのゆめタウンの中にも本屋があるようですが、
樋渡市長は6/11の市議会で地元の本屋を「既得権益」呼ばわりしてますよね。
その時に樋渡市長は
「同じものを同じように置いているようでは駄目。
ポップを作ってお勧めを示したり、レイアウトを変えたりといった
営業努力によって、いい意味での競争が起きるといい。」
というようなことを言っていますが、商売を軽く見すぎだと思うのは私だけでしょうか。
「新刊書は地元書店で買ってほしい」
とも言っているようですが、はっきり言って実効性の薄い軽い言葉だと思います。
行政が図書館という公共の優良スペースをTSUTAYA(CCC)という大企業に
提供しているわけですから、それと競争しろというほうが無茶な気がしますが。
地元経済に悪影響が出ないよう願うばかりです。
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追いやられるのは図書館スペースだけではなく、
文化施設である「蘭学館」も市民に相談することなく問答無用で潰され、
TSUTAYAの有料CD/DVDレンタルコーナーにされる件について
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TSUTAYAやスターバックスに「追いやられる」のは図書館スペースだけではありません。
「武雄市図書館・歴史資料館」は、その名前のとおり、
●図書館
●歴史資料館(企画展示室・メディアホール等)
●蘭学館(常設展示室)
という、図書館と歴史文化施設の複合施設です。
この中の「蘭学館」は、武雄市の貴重な蘭学資料を展示する施設として作られました。
武雄市の蘭学資料の詳細については、武雄市図書館・歴史資料館のホームページの
画面左にある「歴史資料館へ」のリンクに載っています。
武雄市は江戸後期に積極的に蘭学を取り入れたという大事な歴史があるのですね。
その貴重な蘭学資料を展示していた「蘭学館」が、存続を求める市民の声があったにも関わらず、
2012年12月の武雄市議会で市民に何の相談もなく突然一方的に潰されることになり、
蘭学館だったスペースはTSUTAYAの有料CD/DVDレンタルコーナーにされてしまうことが
決定されてしまったのです。
(そのための条例改正案が2012年12月の市議会で可決されています。)
まずは施設の構成を示すために、2012年9月の武雄市議会で使われた新図書館の予定図面を引用します。
2012年9月の武雄市議会で配布された新図書館1階部分の図面。 (「武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会」のブログより引用) |
右上にある楕円形の部分が「蘭学館」です。
武雄市の貴重な蘭学資料を展示する文化施設として作られ、この部分だけは
わざわざオランダから取り寄せた素材も使ったレンガ造り風の建物となっており、
図書館から半ば独立した形になっています。
参考として、建物の外観や、蘭学館内部の写真も引用します。
武雄市図書館・歴史資料館の外観。 向かって左側の楕円のレンガ造りの部分が「蘭学館」。 出典: 五光建設株式会社 |
蘭学館の内部その1。 出典: (株)佐藤総合計画 |
蘭学館の内部その2。 出典: 那須町長 高久まさる氏のFacebook |
蘭学館の内部その3。 出典: 佐賀県ホームページ |
この蘭学館に込められた想いや意義については、井上氏のブログ記事や、
12/20議会での石丸定議員の反対討論をご覧下さい。
蘭学館の扱いについては、2012年9月13日の議会(議事録PDF)では樋渡市長から、
「最初の時点では蘭学館として残したい」(詳細は後述)
と説明されており、2012/11/15に行われた市民説明会でも
「蘭学館は残るんですよね?」
と確認する市民に対し、武雄市役所は
「蘭学館は改修予算には入っていない」
と回答していました。
しかし樋渡市長は、その後市民に相談をすることもなく、
12/11の武雄市議会で突然の「方針変更」を発表し、蘭学館のスペースを
TSUTAYAの有料CD/DVDレンタルコーナーにすると発表しました。
その時に示されたパース図がこちらになります。
地元の歴史研究会の方にとってすら「寝耳に水」の話であり、
12月市議会での話の流れも、以下のように信じられないほど異様なものでした。
12/10 谷口議員(反対派)の質問に対し、古賀教育部長が
「蘭学館については総合的に検討しており、現時点でお答えする環境にない」
と答弁。
12/11 吉川議員(市長の友人)の質問に対し、樋渡市長が
●蘭学館の場所はTSUTAYAの有料CD/DVDレンタルコーナーにする。
●蘭学資料は当面の間は企画展示室に間借りして展示を行う。
●将来的には、現在検討中の新市庁舎の中に、新たな蘭学館を作る。
と発表。
蘭学館のスペースをCD/DVDコーナーにした場合のパース図も披露。
前日の「お答えする環境にない」という回答は一体なんだったのでしょう?
反対派の追及を避けて気持ちよく発表したかったという
姑息な逃げにしか見えません。議員を愚弄するにもほどがあります。
なお、議会後の取材に対し、樋渡市長は
「10日ほど前に最終判断をした」
と答えています。
また、蘭学館の改修費はCCC社が負担するとのこと。
12/12 臨時の教育委員会が開かれ、条例改正についての議論がなされる。
12/14 条例改正案が市議会に提出される。
これを報じた毎日新聞の記事(魚拓)によると、蘭学館移転の理由は以下の通り。
「図書館部分にはCDやDVDを有料でレンタルするコーナーも設ける予定だった。
しかし、コーヒーチェーン「スターバックス」の出店や
全蔵書を開架する方針などのためスペースがなくなり、
蘭学館の移転を決めた。」
12/20 条例が可決され、蘭学館の取り潰しが決定される。
情理を尽くして反対討論を行った石丸議員に対し、
樋渡市長は「議員やめろ!」とヤジを飛ばすという異常な態度を見せた。
私はこれまでの調査で武雄市議会の議会中継や議事録を見てきていますが、
谷口議員、宮本議員、江原議員、石丸議員といった反対派の議員に対し、
ヤジを飛ばしたり、異様に相手を貶める答弁を行う樋渡市長の態度は、
見ていて非常に気分が悪くなりました。
はっきり申し上げて、あれは議論などというものではなく、イジメの構図です。
一度や二度ではなく、事あるごとに反対議員を愚弄し、貶めているのです。
樋渡市長だけでなく、議員達のヤジもひどいと感じました。
これが本当に民主主義を体現する議会であり、市民によって選ばれた首長なのでしょうか?
武雄市議会が日経グローカルの地方議会改革度調査で全国最低レベルなのも
容易に納得できてしまうほどの酷さです。
また、「スペースがなくなったので蘭学館を潰す」とはどういうことなのでしょうか?
この期に及ぶまでスペースの計算を全くしていなかった
ということなのでしょうか?
また、樋渡市長は、「検討中の新市庁舎に新しい蘭学館を作る」と言っていますが、
新市庁舎についてはまだ検討段階であり、完成は数年後になるうえ、3つの検討案のうち
1つは「建て替えではなく現在の市庁舎に耐震補強工事をする」というものです。
その場合に、望ましい形で蘭学館を入れるのは非常に難しいのではないでしょうか。
また、蘭学館の蘭学資料は武雄市の観光資源の1つでもありますが、
市庁舎内に新たな蘭学館を作った場合、週末や祝日の開館は可能なのでしょうか?
わざわざ図書館・歴史資料館と別にすると、管理の手間も増えるだけではないでしょうか?
そのための人員や予算の確保などは検討されているのでしょうか?
とにかく蘭学館を潰して有料CD/DVDレンタルコーナーを確保したいがためだけに、
ろくな検討もせずに問題を先送りにして、無理やり場所を空けただけではないでしょうか?
確かに、8月末の市民アンケートでは、蘭学館に行く人が少ないという結果も出ていました。
蘭学館の展示がほぼ固定されているので、何度も行く必要を感じないのも事実でしょう。
しかし、それを問題視するのであれば、まずは現在の蘭学館スペースでの
展示方法などを抜本的に見直し、改善と活用を検討していくのが本筋ではないでしょうか?
なぜそれをすっ飛ばして、有料のCD/DVDレンタルコーナーにするという話になるのでしょうか?
なぜ、まともな検討もせずに、12/11の市議会で蘭学館のことを
「あんな真っ黒な壁があると入る気にならないですよ」
「そもそも設計ミスです。失敗です。」
「なんであんなのに予算をつけたのか」
「今のままだとどんなにリニューアルしても無理」
などと散々に酷評し、決め付けたのでしょうか?
(この様子は、こちらの動画の54:30~で確認できます)
(2012/12/11市議会議事録(PDF)のp.122~でも確認できます)
なお、蘭学館を潰すという件は、過去にも以下のように何度か話が出ていました。
2012年5月
5/4のCCC社との基本合意記者会見において、樋渡市長が
「企画展示室であるとか、蘭学館の機能というのは、新たに作りたいと思います。」
「今のままだったら図書館としても、企画展示としても、保存としても中途半端なんですよ。
ですので、それはしっかりやっぱりこう分けるのが時代の要請だと思っています。」
などと発言。
2012年7月
樋渡市長が、視察に訪れた那須町長に対して、
「蘭学館は取り壊し、CDなどの視聴覚室にする
2012年9月6日(Web版は9月8日)
毎日新聞の記事(魚拓)で、
「蘭学館は展示をやめ、商用スペースとして
レンタル用のDVDを並べることを検討する。」
と報じられる。
2012年9月13日
樋渡市長は市議会にて
「最初の時点では蘭学館として残したい」
と回答したものの、同時に
「私個人とすれば、あそこにそのまま後生大事に置くのは望ましくないと思う」
「365日置く必要はない」
「蘭学館によく行っていたが、蘭学館は残せという人には1回も会ったことがない。
余り机上の空論を言うのはやめてほしい。」
といった発言もしている。(議事録PDF)
また、上に示した2012年9月の市議会で使われた新図書館の予定図面では、
CD/DVDコーナーについての記載がどこにもなく、不自然です。
(2013/10/24 21:30追記)
2012年9月24日
2013年1月17日に有志の方が開示請求で得た改装図面があります。
図面の修正日は2012年9月24日。
その図面では、既に蘭学館は「映像・音楽コーナー」とされています。
2012年9月議会の閉会(9/21)から、わずか3日後ですね。
下に追記しますが、2013/10/21の武雄市教育委員会の回答では、
「2012/11/15の市民説明会の後で、CCC社から
蘭学館を映像・音楽コーナーとして使いたいという提案を受けた」
と説明されているにも関わらず、9/24時点でこのような図面が存在しているわけです。
武雄市教育委員会の回答内容は明らかに虚偽説明だと考えられます。
武雄市図書館・歴史資料館は、改造工事のために2012/11/1から
5ヶ月館の休館に入っているのですが、12月になってから突然方針変更して
CCC社の予算で蘭学館を改修することを決めるというのも極めて不自然です。
どう考えても、蘭学館をTSUTAYAの有料CD/DVDレンタルコーナーにすることは
最初から決定されていたとしか思えない流れです。
(↓2013/10/24 21:45追記)
2013/10/15に、「武雄市図書館・歴史資料館を学習する市民の会」が、
武雄市教育委員会に公開質問状を提出しました。
2013/10/21に、それに対する回答(10/23に差し替え)があったのですが、
この回答の中では、以下のように述べられています。
『(回答1)ご質問の蘭学館をCD・DVDレンタルコーナーとして提供した経過、
理由のご説明を申し上げます。ご指摘の経過については以下のとおりです。
9月議会(9月12日)市長答弁「蘭学館は残したうえで、展示方法は見直す」
市民報告会(11月15日)部長回答では、「蘭学館については、
市の工事費には含まれていない。蘭学資料は、貴重な歴史資料であるので
これからも大切に守っていく。」と発言しておりました。
しかし、その後、CCCからの提案を受けました。その内容は、蘭学館を、
「映像と音楽のスペース」として使用したいと計画を提案され、
今後、使用許可申請の手続きを進めたい旨の報告でありました。
それを受けて教育委員会でも蘭学館の今後について、ご意見を伺いました。』
あまりにもふざけた虚偽回答だと思います。
上に書いたように、蘭学館を映像・音楽コーナーにするという話は、
2012年5月の時点から何度も記録されています。
2012/9/24時点の改装図面では、既に蘭学館が「映像・音楽コーナー」にされています。
2012/11/15の市民説明会よりも後になってCCC社から提案を受けたという、
武雄市教育委員会の回答は、明らかに虚偽説明でしょう。
それとも、改装図面はずっとCCC社だけが持っており、11/15市民説明会の後になって
初めて武雄市教育委員会に提示されたとでも言うのでしょうか。
仮にそうだとしても、9月議会や11/15市民説明会では「残す」と説明していた
蘭学館を、「取り潰して明け渡す」というのは、大きな話です。
そのような話を、11/15市民説明会からわずか半月という短時間で
市民に意見を聞くこともなく勝手に決め、不意打ちで議案提出して可決。
当初からの明け渡し計画を強引に進めるための詐術であり、
市民を愚弄する行為だと考えています。
武雄市図書館の改装・ツタヤ委託では、このような詐術的な手法や説明が多用されています。
実態をしっかり見てみれば、図書館・歴史資料館機能を大きく損なっただけの
ツタヤへの便宜供与にすぎません。
このような図書館改装を持て囃すことは非常に危険だと考えています。
(↑2013/10/24 21:45追記ここまで)
姑息な説明で反対議員や市民を騙しておき、
ギリギリになって突然「方針変更」するというのは、果たして許される行為なのでしょうか?
このような提案をむざむざ通した教育委員会や市議会の賛成議員達は、
いったい何を考えているのでしょうか?
私は武雄市民ではありませんから、特に蘭学館に思い入れがあるわけではありません。
しかし、井上氏の記事や各種資料などを読めば、重要な文化施設であるということは十分わかります。
私の家の近くの図書館にも、地元の文化資料を展示するコーナーがあります。
来訪者はやはり少ないようですし、来訪者の興味を惹く仕掛けは重要だとは思いますが、
それには限界もあると思います。来訪者の多寡ではなく、
「地元の文化を大事にし、誇りとしていく地域文化こそが重要である」と考えています。
そういった文化施設を市民への相談もなく破壊する樋渡市長達の政治姿勢は異常に思えます。
また、これはある意味仕方ないのかもしれませんが、そういった文化への配慮を見せることなく
商業利用を行うTSUTAYA(CCC社)についても、図書館という文化施設の管理者としての
資質を疑問視したくなります。
蘭学館の扱いは、もっと時間をかけて市民とも相談し、
あるべき姿をしっかりと検討していくべきなのではないでしょうか?
このままではただの文化の破壊であると、私は考えます。
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最後に
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ずいぶん長く書き連ねてしまいました。
色々と説明したとおり、井上氏がブログで示した懸念は事実に基づいた当然のものであり、
市民の多くも現在の状況を知れば同じ懸念を抱くのではないかと思っています。
その一方で、樋渡市長および武雄市役所の主張や行動については
あまりにも異常な点が目立つと私は考えています。
これらを踏まえると、武雄市役所の説明を鵜呑みにして、
「懸念が事実と異なる」という結論を出した佐賀新聞社の判断は
あまりにも甘く見えましたので、
・武雄市役所の安全対策の基準について話を聞いているのか
・それを聞いていないのであれば説得力が薄く公平性に欠けるのではないか
・井上氏の「追いやられる」という主張はデータ上も正しいと思える
・今後も積極的な取材で情報を明らかにしていってほしい
という趣旨のメールを送りました。
私が送ったメール本文は記事末尾に示しますが、
このメールに対し、佐賀新聞社から丁寧な返信を頂くことができました。
質問した数値等については残念ながら回答はいただけませんでしたし、
詳しく書かない方が良いと判断したので内容は一部だけにとどめますが、
●年末進行で時間もない中で、何よりもまず記事を再掲することを優先した。
●記者の知識だけで主張の内容を即座に検証するのは難しい面もある。
●これで議論が終わったとは考えておらず、
井上氏には引き続き検証や意見主張を行ってもらいたいと考えている。
●そのための議論の場として、「ばってんがサイト」を運営していきたい。
といった趣旨でした。
記事を見て「市役所の説明を鵜呑みにして受け入れたのか」と思ってしまっていたのですが、
そうではないようですので、今後の記事掲載や、検証報道に期待していきたいと考えています。
どうか地元の有力メディアとして、市民の皆様に適切な情報を届けていくようお願いいたします。
また、佐賀新聞社に限らず、他の報道メディアなどに対しても、
しっかりとした検証・報道を行っていっていただくようお願いしたいと思います。
新図書館構想についてもそうですが、樋渡市長は、
「普通やらないようなことをやって世間の注目を集め、武雄市や樋渡市長の名前を売る」
ということを異様に重視しているように見えます。
地域活性化のためにも、名前を売るというのは非常に重要なことでもあるのですが、
実際に行われている内容はひどく無計画でお粗末であることが多く、
それにも関わらず「先進的」と無責任に持て囃されている現状には個人的に辟易しています。
また、そういった実のなさはいずれ簡単に見抜かれるものでもあり、
一度見抜かれれば、売れていた名前は一気に悪名へと早変わりするという危険もあります。
数年前に話題になっていた阿久根市などは、その良い実例でしょう。
私は武雄市の発展を阻害したいわけではありません。
ただ、私はこれまでの様々な調査や、樋渡市長や武雄市役所とのやりとり等を踏まえ、
現在では樋渡市長の政治家としての資質を疑問視するようになっています。
そして、このままでは樋渡市長や賛成議員の独断的な政治によって
武雄市が酷い状態になってしまうのではないかと心配しています。
「それなら対案を示せ」と言われるのでしょうが、残念ながらそこまでは今の私にはできません。
ただ、上に書いたように施政の内容がしっかり市民に説明されているとは思えませんので、
まずは市民を始めとする皆様に、事実を広く知っていただきたいと考えています。
これまでの記事にも書いていますが、結局のところ判断するのは市民の皆様です。
誰かを支持し、あるいは反対し、そしてその結果を受け止めるのも市民の皆様です。
その判断材料の1つになることを願って、この記事を書きました。
ご感想などありましたら、ぜひお寄せ下さい。お待ちしております。
以上です。
以下は佐賀新聞社に送ったメール本文となります。(折りたたんであります)
【佐賀新聞社宛に送ったメール】
---投稿日---
2012/12/29 15:53
--- タイトル
---
武雄市図書館の2階部分の安全性についての御社の判断
--- 内容
---
佐賀新聞社メディア戦略局リーダー 樋渡光憲様
昨日ばってんがサイトの井上氏の記事の復活について要望を送った者です。
私の名前については強く匿名を希望いたします。
御社の関係者以外に名前が漏れぬよう細心の注意を払うようお願い致します。
12/28付の以下の記事を拝見しました。
抗議いただいた件の事実確認について(ばってんがサイト事務局)
http://talkbar.saga-s.co.jp/archives/67769369.html
まずは井上氏の記事の再掲と、取材によりいくつかの情報が
明らかにされたことに感謝いたします。
本当にありがとうございました。
ただ、記事中にいくつか疑問に思える部分がありました。
以下に質問項目を挙げますので、どうかご回答いただけないでしょうか。
武雄市役所から聞いていない場合は「聞いていない」とご回答下さい。
質問1.2.1メートル以上の高さの部分はストッパーを付けて
本の落下を防止するそうですが、この落下防止対策は、
どの程度の地震に耐えられるのか聞いておられますでしょうか?
高い部分でストッパーが簡単に外れれば1階への本の崩落は
実際に容易に起き得ると思うのですが。
もし聞いておられましたら教えていただきたく思います。
質問2.2.1メートルより低い部分の本は棚から落ちても
通路部にとどまるとのことですが、これはどういう条件での
話なのか聞いておられますでしょうか?
少なくとも心配されているのは単純落下ではなく
地震時の話だと思うのですが、震度いくつくらいを想定しているのでしょうか?
もし聞いておられましたら教えていただきたく思います。
質問3.武雄市新図書館2階の壁沿いに設置される背の高い本棚ですが、
具体的な高さはどれくらいなのかは聞いておられますでしょうか?
4m近い高さがあるように見えるのですが、本当にその高さだと
職員や清掃員による普段の作業時にも危険が生じると考えており、
市民の多くもそういった点を不安に思っているのではないかと思います。
もし聞いておられましたら教えていただきたく思います。
質問4.これだけ巨大な本棚となると相当な荷重がかかると思われますが、
本棚の設置方法等について何か聞いていらっしゃいますでしょうか?
少なくともキャットウォークに荷重がかかるような設置方法だと
地震時に崩落が発生してしまう可能性も高いと思うのですが。
もし聞いておられましたら教えていただきたく思います。
失礼ながら、特に質問1,2のような前提条件が不明確なままでは、
井上氏の懸念が「事実と異なる内容」だと断じるには根拠が弱すぎると考えております。
前提条件が明かされないまま武雄市役所の「大丈夫」という説明を鵜呑みにし、
井上氏の懸念が「事実と異なる」と断じたのであれば、
御社の公平性や取材能力に疑問を呈さざるをえません。
特に、樋渡市長および武雄市役所の説明には、根拠の無い現実的ではない数字などが
平気で出されることも多く、検証もせず鵜呑みにして報道するのは危険だと考えております。
この問い合わせメールにも返信をいただければ幸いですが、今回の記事への追記や、
今回の取材でわかった点を別途新規記事としてもっと詳しく報道するという形でも構いません。
どうかご回答をお願いいたします。
それと、
「図書館が奥や2階に押しやられ」
「1階部分の開架図書数は従来より増える」
の部分について、一応1つ情報提供いたします。
御社も取材なさったとは思いますが、11/15の市民説明会において、
新図書館の開架スペースの数値が発表されています。
それによると、
従来の図書館の開架スペース: 1140平米
新図書館1階の開架スペース: 1219.3平米
新図書館1階の開架スペース: 352.4平米
新図書館の合計開架スペース: 1571.7平米
(※TSUTAYAおよびスターバックスのスペースである484平米を除く)
になるそうです。
子供スペースが従来より広くなるとも言われていますが、
そのあたりを考慮から外した場合でも、新図書館は、
「従来の1.38倍の開架スペースに、従来の2倍の冊数の図書を開架する」
ということになります。
つまり単位面積あたりの本の密度は最低でも1.45倍になるということです。
普通に考えて、これはかなり恐ろしいことだと思います。
開架・閉架の違いもあるとはいえ、かなり圧迫感のある作りになってしまうことでしょう。
20万冊開架をアピールしているようですが、その結果1階および2階に
使い勝手が悪くなるほど巨大な本棚を設置せざるを得ないというのは
利用者目線を失った、なんともおかしな処置だと考えております。
この点からも「図書館が奥や2階に押しやられる」というのは妥当な表現だと考えます。
なお、本来なら御社に質問するのではなく武雄市役所教育部に質問すべきなのは理解しています。
しかし、私のような一般人が質問しても武雄市役所教育部には無視されてしまうのです。
実際に何通か質問メールを送っていますが、電話で回答の確約を頂いたものでも、
3ヶ月以上放置されており、いまだに1つも回答が届いておりません。
武雄市役所を動かし情報を出させるには、御社のような力のある報道機関に頼るしかない状況です。
昨日お願いいたしました、パース図の公開なども含め、
樋渡市長や武雄市役所の市民への説明不足を、
御社の積極的な取材で補っていただければ幸いです。
樋渡市長は過去に何度も御社に対して理不尽な批判を行っておりますが、
それに屈することなく断固戦っていくようお願い申し上げます。
質問の回答、何卒よろしくお願いいたします。
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