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2013年2月

2013年2月16日 (土)

武雄市図書館・歴史資料館の現在の職員23名の配属先と関連考察(コストや地元書店への影響等)

4月からツタヤを経営するCCC社に運営が委託される佐賀県武雄市「武雄市図書館・歴史資料館」
委託費が年間1億1000万円になるという触れ込みで「コスト削減」と言われていますが、
以前の記事で書いたように、事業計画書では委託費に含まれている人件費は12名分のみであり、
現在の武雄市図書館・歴史資料館に勤務する23名の職員が、
4月からどのような配属になるのか、よくわかっていませんでした。

  参考: 指定管理者制度を利用した武雄市図書館のCCC社への運営委託は
      「コスト削減」にはなっていないと考えます

 
職員さんの雇用は本当に守られるのか、また「コスト削減」は本当なのかといった点を考察するため
武雄市図書館・歴史資料館に質問を送っていたのですが、それに対する回答を頂くことができたので、
記録として公開させていただきます。
対応して下さった武雄市図書館・歴史資料館および武雄市役所 文化・学習課に感謝いたします。

なお、「全て予定です」とのことですので、変更されることもありえます。
それを前提としてご覧下さい。

 
■23名の職員の今後

  注意:CCC社に委託されるのは「図書館の運営と建物の施設管理」だけであり、
      「歴史資料館の運営」は武雄市が直営で行うこととなります。

現在の職種 人数 4月からの雇用 備考
館長
(嘱託職員)
1名 武雄市(※1) 図書館長と歴史資料館長を兼務
副館長 (学芸員)
(市職員)
1名 武雄市 文化・学習課 歴史資料館
歴史資料係
(市職員)
1名 武雄市 文化・学習課 歴史資料館
歴史資料係 学芸員
(嘱託職員)
2名 武雄市 文化・学習課 歴史資料館  
図書係
(市職員)
2名 武雄市 他部署に配属予定
図書係 司書
(嘱託職員)
8名 CCC社 (契約社員)  
6名 CCC社 (契約社員) 通常の司書業務に加え、
販売部門の選書、配架、
書評ポップづくり、ディスプレイ等も行う。
図書係 司書
(長期嘱託職員)
1名 武雄市 文化・学習課 図書館担当  
日々雇用職員 1名 CCC社 (臨時職員) 主に返却本の回収、連絡、営繕等の
業務に当たる。

     ※1・・・事業計画書では、図書館運営委託費の1億1000万円の中に
          館長の人件費も含まれていたので、CCC社の雇用になる気もするのですが、
          回答では「武雄市の嘱託職員として採用予定」となっています。
          兼務の場合の人件費について、どうなるのか正確なところは不明です

 
とりあえず、形はどうあれ全員が継続雇用されるのは何よりだと思います。
当初は学校に司書を配置するという話もありましたが、それはなくなったとのことです。

 
■CCC社についての考察

CCC社は、
   ・図書館運営委託費1億1000万円
   ・販売部門の利益
を財源として、
   「館長(兼務)+15名+20名以上のスタッフ(販売部門アルバイト等も含む)」
を雇用することになります。
冒頭で述べたように、事業計画書によると、武雄市からの委託費には、
人件費は12名分の3241万円しか含まれていません。
CCC社は、それ以外の人員を販売部門の利益で雇用する形となります。
販売部門で利益が上がらなかった場合は、各種支出の引き締めや
スタッフの削減、運営委託費の増額交渉などが発生する可能性もあります。
また、事業計画書にあるとおり、CCC社は1億1000万円の委託費の中で、
5年かけて図書購入費を年間300万円増やす計画を立てています。
コスト捻出のために司書さんが少しずつ減らされたり、アルバイトに置き換えられていくといった、
サービス面を削るような動きがされなければよいのですが・・・。

また、「CCC社が利益を上げない限り運営が立ち行かない」ということを考えると、
武雄市側も、CCC社が利益を上げる方向に動くのを止められないのではないかと思います。
樋渡市長は2011年9月には自身のブログ記事で、

   「図書館は、新刊本をタダで読める便利な本屋じゃありません。
    小説など人気新刊本は、地元の本屋さんで買ってね。
    図書館は本屋と相互補完関係にあるべき。」

   「結局コスト高の図書館流通センターからの購入にもメスを入れる
    (この場合、地元の本屋には1割以下の手数料しか入らない。)。
    地元の本屋から100%直買いする方向で制度設計する。

と言って地元書店に配慮を示していたのですが、CCC社への委託が議論された
2012年6月11日の市議会7月18日の市議会では、
「新刊本は地元の書店で買ってほしい」とは言いつつも、

    「レイアウトを工夫したりポップを置くといった工夫をして競争してほしい」

    「図書館にできないようなサービスをやってほしいということを普通思うと思いますよ。
     何で既得権益を保全しなきゃいけないんだということはやっぱり思いますよね。」

    「一部の民業圧迫に、これは確かになるかもしれません。
     しかし、次元が違います。そういった意味で、私は狭い既得権益よりも
     広範な市民の価値を保全する立場にあなたと違って立っております。

と、地元書店等に対し、図書館(蔦屋書店)との競争を求めるようになっています。

また、2012年9月議会に出された図面を見ると、図書館内の販売部門となる蔦屋書店には、
雑誌だけではなく、新刊本も置かれることになっています。
更に、今回の回答により、

   「一部の司書は、販売部門(蔦屋書店)の選書、配架、
    書評ポップづくり、ディスプレイ等も行う」

ということまで判明しました。
武雄市図書館・歴史資料館から道路1本挟んで向かいにある「ゆめタウン」という
ショッピングセンターの中には書店も入っているのですが、

   「図書館という良い立地条件を確保した上に、
    司書の支援まで得られる蔦屋書店」

と、どのように競争すればよいのでしょうね。

図書館の図書の購入についても、地元書店からの買い上げなどは無理でしょうし、
図書館流通センター(TRC)といったところから購入するのではなく、
蔦屋書店から購入するようなこともありえるのでしょうか?

図書館の図書購入の仕組みや権限は私もよくわかっていませんが、
6月11日の市議会では樋渡市長が

  「CCCが決めることなので、我々がとやかく言う話ではないんですけれども」

と発言していますし、CCC社の利益を優先するとなった場合は、
蔦屋書店からの購入になることもありえるのかもしれません。
適正価格になるなら構わないかもしれませんが、注視していったほうがよいかと思います。

 
■武雄市についての考察

武雄市は、CCC社への運営委託費1億1000万円とはに、
市の財源から、「館長(兼務)+7名の職員」を雇用することになります。
荒っぽくて全く当てにならない数字になりますが、委託費にある「12名で3241万円」という
数字をベースにして単純計算すると、7名分の人件費は1891万円となります。
7名の中には嘱託ではない市職員も4名おられますし、実際にはもっとかかるでしょう。
この人件費を、CCC社への運営委託費1億1000万円に足すと、
少なくとも1億3000万~1億4000万円くらいにはなるものと思われます。
(ただし2名は他部署に配属予定とのことですし、正確なところは要検証。)

 
これも以前の記事で述べましたが、武雄市のここ数年の実質的な図書館費は、
歴史資料館運営も含めて年間1億2000万円前後です。
それと比べると、4月からのCCC社への運営委託はコスト増加となります。
(ただし開館時間は増えます)

 
また、樋渡市長らは、
   「年間の図書館費は平成24年度に予定していた1億4500万円」
だと主張し、そこからの1割削減をうたっているようです。
つまり1億3000万円ほどになるということですね。
しかし、上で書いたとおり武雄市が直接雇う職員さんの人件費を
CCC社への委託費に足しただけでも、1億3000万以上になる
のではないでしょうか。
この他にも歴史資料館の各種運営費などもかかると思われますし、
市民への相談もせずにツタヤの有料CD/DVDレンタルコーナーにした「蘭学館」
今後作られる新しい市庁舎に新設すれば、そちらの運営費も必要になるでしょう。
こういった部分も含め、トータルでコストを見ていく必要があります。

 
■まとめ

やはり以前の記事でも書いたように、開館時間が増えるとはいえ、
トータルとしては「コスト削減」にはならないものと思われます。

また、武雄市だけで4億5000万円もかけた改装費用は、

   「年間運営費を削減するので、十数年もすれば改装費分は捻出できる」

と説明されてきましたが、上で述べた通り結局のところ「削減」にはならないと思いますし、
仮に年間1000万円ほど「削減」されたとしても、捻出には45年の時間が必要です。
コスト削減ができないとなると、改装費は実質的に丸ごと市民負担になるようなものであり、
その場合の金額は、1世帯あたり2万5000円以上となります。

繰り返しになりますが、武雄市図書館・歴史資料館は、2000年10月に完成したばかりの、
まだ綺麗で新しい図書館です。それにも関わらず、4億5000万円もの多額の改装費をかけて
中の本棚まで総入れ替えするような大規模な改装を行って店舗を誘致し、
どう考えても危険な巨大書架に蔵書を詰め込んで図書館の安全性や利便性を下げた挙句、
更には市民の長年の思いがこめられた蘭学館を、事前相談もなくツタヤの有料CD/DVDコーナーに改装

最初から市民を無視した独りよがりな考えで計画が進められてきたのは明らかであり、
市民や反対議員への罵倒もありましたし、市民を騙まし討ちにするようなやり方もとられています。
私には、このような施政が民主的なものであるとは到底思えません。

指定管理者制度には、長期的な人材育成や知の蓄積が難しいなど、様々な問題も指摘されています
新図書館が、かけるコストに見合った、市民にとって有益な公共施設になっていくのかどうか。
実態をしっかり見極め、厳しい目で長期的に見ていく必要があると思っています。

 

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2013年2月13日 (水)

武雄市図書館・歴史資料館の公式HPで事前登録の仮ページが公開されていたというメモ

また記事にするのが遅くなってしまいましたがメモとして。(´・ω・`)

佐賀県武雄市で進められている新図書館構想。
Tカードを運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)社に
指定管理者制度を利用して図書館運営を委託するというものですが、
色々酷い計画だと思い、当ブログでも色々と記事を書いてきています。

さて、この武雄市図書館・歴史資料館の公式ホームページに、
2013/2/6から、なんだか怪しい仮ページが公開されていました。
以下は当時のトップページの該当部分を魚拓からキャプチャしたものです。(魚拓はこちら

Karipage

 
見てのとおり、休館のお知らせの下に、大きく

   「事前入会・カード更新のお知らせ(仮)」

というリンクが作られていたのですが、その後2/8にトップページは修正され、
このリンクは消されてしまったようです。
(消えた後のmain.htmのLast-modifiedがFri, 08 Feb 2013 00:16:30 GMT でした。)

 
このリンク先となっていたのが、以下の2つのページになります。

   武雄市図書館 (Last-Modified: Tue, 05 Feb 2013 23:49:31 GMT) (魚拓

   武雄市図書館:利用規約 (Last-Modified: Tue, 05 Feb 2013 23:49:31 GMT) (魚拓

 
とりあえず気になるのが、施設の名称ですね。

Takeoshitoshokan

 

現在の「武雄市図書館・歴史資料館」という名前から「・歴史資料館」が削られて
「武雄市図書館」になるのではないかという推測は以前の記事でも書いたとおりですが、
どうやらほぼ確実に「武雄市図書館」になるようですね。

 
もう1つ気になるのが、利用規約のページ。

Kiyakudate

 
気になったのは、

  ◎事前登録期間が3/4~3/27となっているにも関わらず、
    規約の日付が「2013年3月20日」になっている。

  ◎「武雄市図書館・歴史資料館設置条例」および
    「武雄市図書館・歴史資料館設置条例施行規則」の日付等が
    ●印となっており、具体的な数字が示されていない。

  ◎条例名の「歴史資料館」がなぜか「歴史館」となっている。(単純ミス?)

といったあたり。

名前から「歴史資料館」を削り、企画展示室やメディアホールのスペースまで
CCC社に提供しようとしてるのではないかという懸念以前の記事でも示しましたが、
規約の日付の3/20というのは3月議会終了間際となる日付。
開館直前の事前登録期間中に条例改正が行われることはないと思いたいですが、
12月議会で突然蘭学館を取り潰す条例改正が行われた前例があるので不安です。
以前の記事でも書いたとおり「エポカル武雄」という愛称のほうもどうなるか心配ですね。

あと気になった点やツイッター等で指摘されていた点をおおまかに書くと以下のような感じでしょうか。

  ◎従来の図書貸出カードは、有効期限設定をすればそのまま使える。
    自動貸出機でポイントを付与するためだけに、図書館という公共施設に
    Tカードを導入する必要はあったのだろうか。

  ◎図書館の利用登録なのに「事前入会」という表現がされているのはなじまない。

  ◎「従来の図書貸出カード」「Tカード」の2種類がある理由や
    それぞれのメリット・デメリットなどの特徴が説明されていない。

  ◎Tカードの規約との整合性はとれているのか

  ◎Tカードに関する詳しい説明のほうが重要だがそれが存在しない。
    昨年11/5付で開示された協定書によると、
       ・Tカード番号
       ・使用年月日
       ・使用時刻
       ・ポイント数
    がCCC社に渡されることになる。

  ◎他にも色々指摘されてた気がするけど忘れたorz

 
しかし、なぜこのような仮ページが公開されたのでしょうか?
しかも、トップページからのリンクは2日間で削除。

昨年5月のCCC社との合意会見等でTカード問題が炎上した反省から、
あらかじめ仮のページを公開して問題が指摘されるのを待ち、
それを踏まえて本番ページを作成することで、炎上を抑えようとしているのでしょうか。

なんともよくわかりません。

 

と、まあこういう記事をのんびり書いていたら、2/12に正式版の事前登録ページが公開されたようです。
規約の日付は2013年3月20日のままですし、条例の名前も「歴史館」になってますが・・・。
そちらについてはまた別途記事にするかも。しないかも。

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2013年2月 7日 (木)

武雄市図書館の蔦屋書店の「コンシェルジュ」は時給730円のアルバイト?

記事にするのが遅れましたがメモとして。

佐賀県武雄市で進められている新図書館構想。
2013年4月1日の開館を目前に控え、スタッフの募集も始まっています。

スタッフと言っても、図書館内の「蔦屋書店」と「スターバックス」のアルバイトの募集ですね。
フロムエーやハローワークに出ている募集広告のリンクを以下に示します。
 

   【フロムエー】スターバックス  コーヒー 蔦屋書店 武雄市図書館店のアルバイト(NO.29615198)魚拓
       募集期間: 2013/1/14~1/28
       職種: バリスタ(カウンター・レジstaff)
       時給: 730円

   【フロムエー】スターバックス  コーヒー 蔦屋書店 武雄市図書館店のアルバイト(NO.29780039)  (募集期間延長)(魚拓
       募集期間: 2013/1/28~2013/2/11
       職種: バリスタ(カウンター・レジstaff)
       時給: 730円

   【フロムエー】蔦屋書店 武雄市図書館のアルバイト(NO.29613773)魚拓
       募集期間: 2013/1/28~2013/2/11
       職種: (1)オペレーターstaff (【映像】【音楽】の各部門を担当)
           (2)書籍コンシェルジュ (【書籍部門】での販売・レンタル業務)
       時給: (1) 670円
           (2) 730円

   【フロムエー】蔦屋書店 武雄市図書館のアルバイト(NO.29905184) (募集期間延長)(魚拓
       募集期間: 2013/2/11~2013/2/25
       職種: (1)オペレーターstaff (【映像】【音楽】の各部門を担当)
           (2)書籍コンシェルジュ (【書籍部門】での販売・レンタル業務)
       時給: (1) 670円
           (2) 730円

   【フロムエー】蔦屋書店 武雄市図書館のアルバイト(NO.30085576) (募集期間再延長)(魚拓
       募集期間: 2013/2/25~2013/3/11 (3/8に応募期間終了となった模様)
       職種: (1)オペレーターstaff (【映像】【音楽】の各部門を担当)
           (2)書籍コンシェルジュ (【書籍部門】での販売・レンタル業務)
       時給: (1) 670~1100円 ←金額幅追加
           (2) 730~1200円 ←金額幅追加

   ハローワークインターネットサービス(渋谷公共職業安定所)魚拓
       募集期間: 2013/1/30~2013/3/31
       職種: 書名・CD・DVDの販売及びレンタル
       時給: 670円~800円

 
佐賀県の平成24年度地域別最低賃金額(厚生労働省)が653円ですから、
オペレータースタッフなどはかなり安い賃金設定となっていますね。

 
個人的に一番気になったのは、「書籍コンシェルジュ」が時給730円のアルバイトだという点です。
「コンシェルジュ」という言葉になじみのない方もいると思いますが、一般的にコンシェルジュとは

   「豊富な知識に基づいて顧客からの様々な要望に応えたり提案などを行うサービス職」

のことを表します。(参考: Wikipediaコトバンク

CCC社が経営する「代官山蔦屋書店」には様々なジャンル毎のコンシェルジュがいますが、
多くの方は全国公募から選抜された、深い知識と経験をもつスタッフのようです。
「代官山蔦屋書店 コンシェルジュ」で検索すると色々な記事が出てきますが、
いくつか参考記事を示します。

   DAIKANYAMA T-SITEに携わっているコンシェルジュの本と公式サイトが出来上がりました。

   THE CONCIERGE BOOK | 代官山 蔦屋書店

   向かうところ敵なしの知識と経験。代官山 蔦屋書店の「コンシェルジュ」ってどんな人?

   代官山 蔦屋書店コンシェルジュが推薦! “大人と子どもが一緒に楽しめる” 心地いいあのタイトル

   「代官山 蔦屋書店」が目指す未来の本屋 (1/2) - ITmedia マーケティング

 
武雄市の場合、募集資格のところに

   「(2)本に詳しい方!!BOOK販売経験者大歓迎」

とは書いてありますが、時給730円という待遇でコンシェルジュを名乗れるほどの人材が雇えるのか、
仮に雇えたとしても、時給730円という待遇で良いのか、
「コンシェルジュ」と「普通の書店員」との境界はどこなのかなど、色々と疑問が残ります。

  ※2013/3/9 2:00追記
    上にあるとおり、2/25~の募集では時給は730~1200円という表記に変わったようです。

そもそも、武雄市図書館内に出来る蔦屋書店は、代官山蔦屋書店とは違って、
売り場は大して広くないはずなのですよね。(ただし図書館内で占める面積としてはかなり大きいですが)
以下に、武雄市図書館内の蔦屋書店部分を塗り分けた図を示します。

名前が「武雄市図書館」に?

 
有料のCD/DVDレンタルコーナーは上のパース図では見えない手前の蘭学館の中に
出来ますので、上の図で見えている部分は書籍販売のスペースだけとなりますが、
右側に見えるスターバックス前から奥にかけた通路部分はいわゆる「マガジンストリート」で、
2012年11月15日の市民説明会での説明によると、

   「1000タイトル以上の雑誌を置く」

とも言われています。(館内での閲覧は無料だが、商品なので館外への貸出は無い)
雑誌の品揃えはそこそこあるにしても、蔦屋書店部分だけに限れば、
そもそもコンシェルジュが必要になるほどの品揃えには
ならないような気もするのですが、どうなのでしょうね。

なお、以前の記事にも書きましたが、アルバイトで募集されるコンシェルジュとは別に、
従来の武雄市図書館・歴史資料館に勤務していた司書さん達の一部が、
「図書館司書」ではなく「蔦屋書店の店員」として雇われる可能性もあります。
そのあたりもまだはっきりしていないのですが、仮に司書の資格を持つ方が
蔦屋書店のコンシェルジュとして働くのであれば、司書の専門性を生かした
案内や提案が行われる可能性もあります。
ただ、その場合コンシェルジュと言っても、通常の図書館でも行われている
司書のリファレンスサービスと変わらないような気もしますね。
指定ジャンルのスペシャリストになるよう研鑽が求められるのかもしれませんが・・・。

また、以前も書きましたが「蔦屋書店」と「武雄市図書館」の業務の切り分けもよくわかりません。
コンシェルジュのアルバイト募集広告
を読むと、

「主に雑誌を中心に20万冊扱う書籍エリア。
 世界の最新情報誌が並ぶ「マガジンストリート」の他
 「人文」「旅行」「料理」など様々なジャンルを展開しています!
 より見やすく、使いやすい新しい図書館をつくりましょう。」

と書かれています。
20万冊というのは武雄市図書館の今後の予定蔵書数ですから、
「蔦屋書店の店員(コンシェルジュ)」は、有料の新刊本の案内だけでなく、
図書館の蔵書も含めて案内や提案を行ったりするように見えますね。
書店の店員が公共の図書館の案内をするというのは、
なんだか違和感がありますが、そういうふうになるのでしょうか。
書店側の販売ノルマなどもあると思いますので、
案内が新刊本に偏ってしまう可能性もあるような気がしますが・・・。

  ※2013/3/9 2:00追記
    これまで武雄市図書館・歴史資料館に勤務していた司書15名は
    CCC社の契約社員として採用されますが、一部の司書さんは、
    通常の司書業務に加え、蔦屋書店での販売などの業務も行うとのことです。
    図書館と有料部門の切り分けがより一層わからなくなりました。

      参考記事: 武雄市図書館・歴史資料館の現在の職員23名の配属先と関連考察(コストや地元書店への影響等): さまよう金の髭

 
なんにせよ、「コンシェルジュ」という聞きなれない名前だけで

   「なんか新しくて素晴らしくてかっこいいサービスって感じがする!」

などと判断するのはやめたほうが良いと思います。

  ・コンシェルジュを務めるスタッフはしっかりした資質を持っているのか

  ・結局は従来の司書によるリファレンスサービスと同じなのではないか

といった点もしっかり見極め、形だけ、名前だけ、見せかけだけのサービスになっていないか
厳しい目で見ていったほうがよいのではないかと思います。
(サービスの質の判断はなかなか難しいかもしれませんが)

地域性や需要、コストや人材確保といった色々な条件を考慮せず、
うわべだけ代官山蔦屋書店を目指してもダメだと思うのですけどねえ。

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2013年2月 3日 (日)

「武雄市図書館・歴史資料館」から「・歴史資料館」が消える?「エポカル武雄」という愛称はどうなる?

佐賀県武雄市の図書館の正式名称は「武雄市図書館・歴史資料館」です。
武雄市図書館・歴史資料館設置条例」での名称がそうなっていますし、
公式ホームページでもそうなっています。当たり前ですね。

図書館に「歴史資料館」「蘭学館」という歴史文化施設が併設された施設となっており、
司書さんや学芸員さんが連携して動けるといった相乗効果もあります。

しかし、以前の記事にも書いているとおり、貴重な蘭学資料を常設展示していた
「蘭学館」が、市民に何の相談もないまま樋渡市長の意向により
突然かつ一方的にTSUTAYAの有料CD/DVDレンタルコーナーにされてしまうこと

2012年12月の市議会で決定してしまっています。

蘭学館に展示されていた蘭学資料は、当面は図書館内にある歴史資料館の
「企画展示室」や「メディアホール」に間借りして展示されることになっているようです。
ただし常設展示されるかどうかはわかっていませんし、もし常設展示するなら
歴史資料館の企画展も、従来にくらべて色々と制限されてしまいます。
歴史資料館(蘭学館)の機能が低下してしまうのは間違いないでしょう。
樋渡市長は

  「現在改修もしくは新築が検討されている市庁舎に新蘭学館を作る」

としていますが、TSUTAYAに提供するために無理やり場所を空けただけであり、
複合文化施設としてのメリットを大きく損なう愚行だと言えるでしょう。

 
さて、その「武雄市図書館・歴史資料館」ですが、ツイッターで

   「4月からは”武雄市図書館”と呼ばれることになり、
    "歴史資料館"の部分が削られるのではないか」

という指摘が出ていました。

 
どういうことかと言うと、2013年1月11日にNHK九州の「特報フロンティア」という番組で
武雄市の取り組みが紹介された
のですが、その中で、樋渡市長が代官山蔦屋書店を訪れ、
CCC社側の担当者である高橋氏から新図書館のイメージ図を見せてもらっているシーンがあったのですね。
そのシーンで出てきたイメージ図を見ると、図書館の入り口などには

   「武雄市図書館」

とあるだけで、「歴史資料館」の文字が無いのです。
該当部分を切り出した画像を以下に示します。
 

出典: 2013/1/11放送 NHK九州「特報フロンティア」
(クリックで別窓で拡大)
名前が「武雄市図書館」に?

 
うん、どう見ても「武雄市図書館」だけですね。
ツイッターで指摘されている通り、画像中央のイメージ図を見ると、
現在の蘭学館の外壁にもこの文字が入るようですね。
その蘭学館の中は図書館ではなくTSUTAYAの有料CD/DVDレンタルコーナーにされてしまうのですが。

確かにCCC社が委託されたのは図書館の運営と建物全体の施設管理だけであって、
歴史資料館部分の運営は武雄市の直営のままですが、これでいいのでしょうかね?
あくまでもイメージ図ですから変更される可能性もありますが・・・。
(そういえば現在の門や入り口にはどう書かれているのでしょう?
 「武雄市図書館・歴史資料館」だとは思うのですが、行ったことがないので不明です。)

蘭学館や歴史資料館を軽視してCCC社に便宜を図っている樋渡市長の姿を見ていると、

   「すぐにではないにせよ、いずれは歴史資料館の企画展示室や
    メディアホールもTSUTAYAに提供することになっているのではないか」

   「蘭学館だけでなく歴史資料館も新市庁舎に移転させる気なのではないか」

という疑惑も浮かんできます。
新図書館は、図書館部分も商用部分も広さなどの面で非常に無理のある作りになると思うので、
CCC社(蔦屋書店・スターバックス)としても売り場面積を広げたがる気がするのですよね・・・。
「武雄市図書館」という表記はそのための布石かもしれないとまで考えてしまいます。
杞憂であればよいのですが、樋渡市長は常におかしな方向に暴走しているので油断できません。
新市庁舎が完成する前でも、あの手この手でTSUTAYAに便宜を図りそうで心配。

  「企画展示室とメディアホールを蔦屋書店の販売スペースとして提供し、
   蘭学資料も含めた各種の展示などは文化会館を間借りして行う」

なんて血迷ったことを言い出しても不思議じゃない気がします。(個人の感想です)
収蔵庫などもありますし、そうそう移転できるものではないはずですから、
少なくともすぐに条例改正などが行われたりするようなことはないと思いたいですが・・・。

もっとも、本当に新市庁舎にしっかりした「歴史資料館・蘭学館」が作れるのであれば、
TSUTAYA化された図書館に置くよりはいいという考え方もあるかもしれませんね。
ただ、その場合図書館や司書との連携も難しくなり、休日開館することなども考えると
人件費や光熱費などで全体の運営費用が増加することになるでしょうけども。

 
さて、ここで名称についてもう1つ心配が。

「武雄市図書館・歴史資料館」には、「エポカル武雄」という愛称があります。
広報武雄1999年5月号(PDF)によると、この愛称は1999年2月に武雄市教育委員会が全国公募を行い、
1133点の応募の中から愛称選考委員会と当時の市長によって選ばれた名前だそうです。
「エポカル(epochal)」には「新時代の」「画期的な」という意味があります。

しかし、過去の樋渡市長のブログを見ると、樋渡市長はどうも「エポカル」という愛称を嫌っているようです。

   2006年12月9日の記事
     「また、エポカルという名称も考え直す時期に来ているのかもしれません。」

   2007年6月3日の記事
     「エポカル武雄という名前が本当にいいのかを含めて、
      ここを抜本的に変革したいと思っています。」

   2007年9月22日の記事
     「エポカルという略称は変ですが・・(笑)。」

 
数年前の話であり、最近は特に言及してはいないようですが、
今回の指定管理者制度導入を良い契機とみなして
この愛称を撤廃する動きをしそうで心配です。
撤廃までいかなくとも、愛称の使用機会(表示等)を少なくしていくかもしれません。
公募で決めた愛称を市長とはいえ一個人の感性で撤廃するというのは普通は考えられませんが、
個人の感性だけでまだ新しい図書館に4億5000万円もの多額の改修費(税金)を注ぎ込み、
上辺だけ代官山蔦屋書店っぽくしてしまう方ですからねえ・・・。
「エポカル武雄フレンズ」という図書館関係のボランティア団体もあるのですが、
果たして「エポカル武雄」という愛称は今後も継続して使われていくのでしょうか。

ちなみに、この愛称については、昨年8月末の市民アンケートでも

新しいものを取り入れることには賛成だが、
今の図書館の良さが消されてしまいそうで心配。
「武雄の図書館」というスタイルは消えてほしくない。
・・・「エポカル武雄」という愛称はどうなりますか?
子供達には「エポカル」で親しまれているようです。

記入なさった方がおり、それを踏まえて昨年11/13に私から武雄市役所 文化・学習課宛に

    「エポカル武雄」という名称はそのまま使われるのでしょうか。

という質問メールを送ったのですが、回答は得られておりません。
11/15に行われた市民説明会での説明を求めてみたのですけどね・・・。

 
武雄市では、樋渡市長(と賛成議員、場合によっては市役所)によって、
色々なことが独断的・なし崩し的に進められてしまっています。
武雄市民の方がしっかり市政を監視して、必要な時は声を上げていかないと、
気づいた時には武雄市の色々なモノがボロボロになってしまっているかもしれません。
上辺だけの言葉やデマカセに騙されず、実態をしっかり見極めて判断していく必要があると思います。

 

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