武雄市図書館に関する文部科学省の指導を無視した樋渡市長
今更な感じではありますが、この件についてツイッターで
千葉市の熊谷市長がやりとりなさっているのを見かけたこともあり、
情報をまとめておいたほうが良いと思いましたので、書いてみました。
2013/7/28に開催された、松阪市図書館シンポジウムにおいて、
文部科学省と武雄市との間、また武雄市教育委員会と樋渡市長との間で
どういうやりとりがあったかが樋渡市長の口から一部明かされておりましたが、
その発言の詳細な内容も新たに判明しましたので、それも含めてまとめています。
樋渡市長や武雄市教育委員会は、武雄市図書館の改装にあたり、
文部科学省からの指導を無視したようですね。
■千葉市の熊谷市長のツイッターでのやりとり
@kumagai_chiba @ronzo7415 @chartreuse_vep @Ivarn 「文部科学省と調整し」というのは憶測でしょうか。事実を挙げますが、樋渡氏は松阪市で、文科省からの強い指導を無視したと明かしています。http://t.co/PPmh7kQXvX
— 焼きプリン(特殊市民) (@baked_pudding) August 15, 2013
@baked_pudding @ronzo7415 @chartreuse_vep @Ivarn 彼の言はともかく、現実として文科省の指導を無視したら補助金は出ません。
— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) August 15, 2013
@kumagai_chiba 昨日も書きましたが、今の館内デザインは、文科省からの指導を無視するという大胆な行動の上に成り立っています。現に熊谷市長はその事をご存知なかったようですが、そのような背景を知らずに刺激だけ受けても議論にならないのはご理解いただけるのではないでしょうか。
— サティスファクションギャランティ太郎 (@ronzo7415) August 16, 2013
@ronzo7415 私は全面的に肯定しているのではなく、メリットデメリットを議論して、今後に活かせるものがあるとすればその部分は吸収したいと思っています。文科省の話は直接知る立場にはないので間違っていたら恐縮ですが、指導を無視して補助金は出ないと思います
— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) August 16, 2013
■はじめに
武雄市図書館の改装では、文部科学省(文科省)と色々と揉めたようです。
2000年10月に新築開館したばかりの、まだ綺麗で新しかった図書館を、5ヶ月も休館して、
8億円(7.6億円?うち市税2.6億円、国税2億円)もかけて改装し、市民を欺いて蘭学館をツタヤに明け渡し、
不便で危険な巨大書架を導入して開架部分の蔵書密度を従来の約1.6倍に上げ、
無理やり蔦屋書店(レンタル含む)とスターバックスを入れた上に、
図書館部分と営業部分の区分が曖昧なのですから当然ですね・・・。
改装開館直後の2013年5月中旬には、
「地元の学生さんが、図書館の席に座っていたにも関わらず、
スターバックスの店員に商品の購入を求められた。」
という問題が発覚し、武雄市図書館や樋渡市長がお詫びを出すという事件も起きています。
座席の区分を明確にすべきという指摘は、ずっと前から上がっておりましたし、
この記事を書いている時点でも、わかりやすい案内はされていないのが実状です。
関連記事:
武雄市図書館で苦情 スタバ席と共有席混同/佐賀新聞ニュース(2013/5/15)
#武雄図書館 #武雄市図書館 の #スターバックス の話題を時系列で。 #takeolibrary - NAVER まとめ
少なくとも、初めて武雄市図書館を訪れた人は、
「スターバックス周辺の席(テラス含む)は、全てスターバックスの席である」
と誤認することも多いのではないでしょうか。
実際には、テラスは図書館用の席ですし、テラス出入り口付近も図書館用の座席です。
武雄市役所は2013/8/5に座席の区分についてFacebook記事を投稿しているのですが、
この区分図は武雄市図書館公式サイトには置かれておりませんし、
武雄市図書館での掲示や案内などもなされておりません。
Facebookの記事はすぐに流れ去ってしまうので、告知には不向きなのですが、
それを指摘されても、まったく改善がなされないようです。フェイスブック・シティが聞いて呆れますね。
おまけに、Facebookのコメント欄で武雄市役所が回答している座席数(回答に3日かかった)は、
明らかに間違っていることがわかっています。
例えば図書館用の「読書スペース席」が36席と回答されていますが、
テラスだけでも36席あり、館内部分の22席をあわせると58席あるといった点などですね。
書架についても、図書館部分と蔦屋書店部分はサインの色(黒or白)で
色分けされているとはいえ、混乱する人もいるでしょう。
余談になりますが、6月市議会での谷口攝久議員や山口裕子議員らの尽力により、
7月に武雄市図書館に無料の水飲み場が設置されました。
改装前には置かれていたのですが、改装により無くなっていたのですよね。
暑い時期を迎えるということで、熱中症対策などの意味も含め、
急遽夏休み前までに設置されることになったのですが、
この水飲み場の設置について、武雄市図書館や武雄市役所は何も告知していません。
7/29の武雄市役所Facebookに、水飲み場の設置告知を求めたコメントがありますが、
武雄市役所は「いいね!」すらつけず、完全に無視を続けています。
都合の悪いコメントを無視するのはいつものことですが、理由として考えられるのは、やはり
「水飲み場の設置を告知することで、スターバックスの利益が減るのを恐れた」
ということでしょうね。
「経営しているCCC社ならともかく、
武雄市役所がスターバックスの利益を気にする理由はないだろ」
と考える方もいると思いますが、武雄市図書館の指定管理契約は、
「蔦屋書店やスターバックスで利益を上げてもらわないと
図書館そのものの運営が成り立たなくなる」
という、歪んだ契約(人件費が12名分しか入っていない異常に低い委託金額)になっています。
従って、スターバックス周辺の座席の明確な区分をしないことも、
水飲み場の設置告知をしないことも、武雄市役所がスターバックスに
便宜供与・利益供与という名の「配慮」をした結果なのではないかと推測しています。
市民や図書館利用者の方を向いた、行政としてのまともな案内は、もう期待できないのでしょうか・・・。
樋渡市長は、2013/3/8の社団法人日本書籍出版協会への回答書の中では、
「販売エリアは、公立図書館の扱いとは完全に区別され、」
と回答しているのですが、現実には、区分が極めて曖昧で非常にわかりにくい状態が続いています。
後に示すとおり、この、
「図書館部分と営業部分の区切りがあまりにも曖昧すぎる」
というレイアウトは、樋渡市長が、文部科学省の指導を無視して、やったもん勝ちな考えで
ゴリ押しで押し通したようなのですが、そんなことで本当に大丈夫なのでしょうか。
文部科学省の図書館行政は、いったいどうなっているのでしょうか。
まあ、一番ダメなのは、自分がやりたいことをやるのに邪魔だという理由で
図書館法を「規制」呼ばわりして一方的に敵視し、文部科学省や
図書館法などの法の精神(理念)を理不尽に貶めている樋渡市長なのですけどね。
これまで何度も書いているとおり、
「邪魔になったもの、批判をしてくる者に対して、
具体的・論理的な説明をして議論をするのではなく、
屁理屈を述べ、相手を一方的かつ理不尽に貶めて自己正当化を図る」
というのが樋渡市長の行動原理ですので、
「中央省庁や既得権益と戦ってる俺カッコイー」
といった樋渡市長の中身空っぽの上辺だけの言葉や
おかしなパフォーマンスに騙されないようにしたいものです。
「市民のため」などという発言もありますが、2013/1/21の徳島ICT講演会で
「なんで市民の声を聞かなきゃいけないんだ」
と言い放った事実は、しっかりと認識しておきましょう。
言葉に惑わされず実態を見据えなければ、樋渡市長の酷い本質は見抜けません。
では、文部科学省についての発言や、やりとりについてまとめてみます。
■2013/4/1 武雄市図書館改装開館時の取材での樋渡市長の発言
●2013/4/2 毎日新聞
「武雄市図書館:改装オープン 指定管理者・TSUTAYA、批判や疑問続く」より
(元記事は既に削除。魚拓→ ページ1 ページ2)
◎ページ1より
樋渡市長も
『図書館法は規制が多すぎる。文部科学省には『地方に決めさせてくれ』と文句を言いたい。
今後は市民の意見を大切にして、規制をぶっ壊す図書館を目指したい』
とぶち上げた。
●2013/4/30放送 テレビ朝日 報道ステーションより
概要→ ページ1(魚拓) ページ2(魚拓)
※重要: 酷い提灯報道でしたので、番組内容を真に受けないで下さい。
しかし、“規制の壁”が立ちはだかり、民営化までの道のりは苦難の連続だった。
図書館法では、公立図書館は“無料”が原則。文部科学省と交渉を重ね、
樋渡市長は、スペースを2つに分け、1つを図書館、1つを賃貸にし、
「図書館ではない」という理屈で押し切った。
◎放送映像より(2013/4/1開館時のコメント)
樋渡市長
『規制が多すぎる。もぉ、ほんとに。
もぉ~、文科省どうかしてよ、ほんと。
いろんな規制をぶっ壊すね、
図書館になるようにしたいと思いますよね。』
◎放送映像より(2013/4/1開館時のコメント)
ナレーション
『しかし、民営化の道のりは苦難の連続だった。
立ちはだかったのは規制の壁だ。』
樋渡市長
『図書館法ですよ。
市民の皆さんたちが来たい図書館にする。
そのときは色々な規制にぶつかるんですよ。
それは丁寧に1つ1つ、ぶっ壊していきたいと。』
■2013/7/28 松阪市図書館シンポジウムでの樋渡市長の発言
20130728 松阪市での図書館シンポジウム(樋渡市長講演など) その1 - Togetter
20130728 松阪市図書館シンポジウム(樋渡市長講演など) その2 - Togetter
樋渡市長は武雄市図書館から子供を切り離すために新たに別館を建設するらしい
(承前)武雄市図書館の雇用について。CCCの雇用は全部地元から。(雇用を生んでいる。)東京の企業に吸い上げられている?という指摘は値しない。開館前に文部科学省から商業施設とのゾーニングについて柵を設置するなど強い指導を受けた。しかし無視した。(続)
— 某氏 (@hatunknown) July 28, 2013
※以下の詳細な発言内容について
これらの樋渡市長の発言は、講演会に参加なさっていた方からの
情報提供を受けて、私が書いたものです。
●講演冒頭で、上で挙げた4/30報道ステーションの動画を見せながらの発言
樋渡市長
『これ「文科省どうかしてよ」って言った翌日に、
文科省から矢のように批判の電話がかかってきました。』
●講演内での発言
樋渡市長
『ここは、えっと代官山、あ~、ごめんなさい、蔦屋書店のエリアなんですね。
で、こっちは図書館ゾーンなんですよ。
で、わざと切れ目をいれなかったんですね。
で、どっかのお役所は、文部科学省っていうお役所は、
あの~、柵を作れとか言ってきたんですよ。柵作れって。
で、それが叶わないって思ったら、
今度、色変えろって言ったんですね、床の。
うん。
で、教育委員会がうち凄い困ったんですよ。もう。
文科省から言われてますって。
無視しろって言いました。全部。うん。
で、もし、本当に反対するんだったら俺を訴えろっていうことを言ったら、
他のところで訴えられました。うん。
で、・・・これはあんまり受けなかったですね。』
※補足
「他のところで訴えられました」は、おそらく武雄市民病院の
民間委譲問題で起こった住民訴訟のことだと思われます。
図書館改装よりも以前に起きたものですし、既に終了しているのですが、
単にそれとひっかけて笑いをとりたかったようですね。
樋渡市長が文部科学省に訴えられているわけではありません。
●参考
◎2012/5/30 日本図書館協会の見解・意見・要望より抜粋
3 図書館サービスと「付属事業」について
「9つの市民価値」に列記された多くの点は、「骨子」に言う
"重要な手段として展開する付属事業"を色濃く出すものとなっております。
図書館の基本的サービスとは無関係のことであり、指定管理者制度導入の理由にはなりません。
その必要性についても説明すべきことです。
総務省は、指定管理者との間で
「自主事業と委託事業について明確な区分が定められているか」
を指摘しています(「指定管理者制度の運用上の留意事項」 2008年6月総務省自治行政局)。
図書館事業と指定管理者の自主事業(ここでいう「付属事業」)とを混同しないよう求めています。
雑誌販売や文具販売、あるいはTカード、T ポイントの導入が、
"重要な手段として付属事業の展開"と位置付けていることについて、疑問を抱かざるを得ません。
参考:
指定管理者制度の運用上の留意事項
■2013/6/20に、文部科学省社会教育課の坪田知広課長が武雄市図書館を訪問
※改装についてやりとりした部局なのかどうかはよくわかりませんが、
こんな評価でいいのでしょうか。一体何を見たというのでしょうね・・・。
この課長の意見が文部科学省の正式見解というわけではないでしょうが・・・。
“TSUTAYA図書館”国の専門官が視察
コーヒーを飲みながら本が読める公立の武雄市図書館を20日、国の専門官が視察し
「普及させたいタイプの一つ」と機能やサービス面で評価しました。
武雄市図書館を視察したのは、文部科学省社会教育課の坪田知広課長です。
社会教育施設の現状を把握するために訪れたもので、館長や担当職員らの案内で
館内を細かく見て回り、施設の概要や利用カードの取り扱い状況などについて説明を受けました。
武雄市図書館はレンタルソフト店「ツタヤ」の運営会社が手掛ける全国初の公立図書館で、
コーヒー専門店の出店やポイントカードの導入など新たなサービスが話題となっています。
(坪田課長)「居心地のいい空間だなというのが第一印象。いろんなタイプがあっていいが、
これも普及させたいタイプの一つだなと、その機能やサービス面で感じた」
また坪田課長は
「堅い教育施設だと使われないままになる。
この図書館は新しい利用者をつかむという意味では
新たな教育機関としてあるべき姿だ」
と評価しました。
●図書館友の会全国連絡会のメンバーの方による本件についての問い合わせ
図書館友の会全国連絡会のメンバーの方が、
この件について個人的に文部科学省に問い合わせをなさったそうです。
それに対し、坪田課長からのコメントが返信されており、
そのコメントが、以下のブログで紹介されています。
「武雄市図書館・歴史資料館への評価について」文部科学省へ問合せ - 突発非同期不連続
●その他の参考記事
■2013/7/30 文部科学省への問い合わせ
7/30に「文部科学省生涯学習政策局社会教育課図書館振興係」に
問い合わせを行った方がおられました。
そのときのやりとりや反応については、以下にまとめています。
20130730 武雄市図書館と文部科学省 - Togetter
この問い合わせでは、とりあえず主だった点については、
「問題なし」という見解のようではあります。
「ゴリ押しのやったもん勝ち」の実例を作ってしまったように思えるのですが、
図書館行政がこれで良いのか、疑問が残ります。
まともな議論がなされたとは到底思えませんので、
より広い範囲で議論がなされていくことが望ましいのではないかと考えます。
なお、私の武雄市図書館に関する意見の概要は、以下の記事にまとめております。
※2013/8/17 7:26
千葉市の熊谷市長に、この記事をお知らせしてみました。
熊谷市長、おはようございます。樋渡市長が文部科学省の指導を無視した件について事実関係をまとめましたので、お知らせいたします。お時間のある時にでもお読み頂ければ幸いです。 http://t.co/ldTKdQkrFd @kumagai_chiba #takeolibrary
— 金の髭 (@goldenhige) August 16, 2013
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